雨漏りのお悩みを解決
ビルのオーナーにとってメンテナンスは重要な問題です。特に雨漏りは入居者に迷惑がかかるだけでなく、ビル(建物)全体に大きなダメージを与えてしまいます。
今回はビルの雨漏りの原因と修理についてご説明します。
ビルの雨漏りの原因は、次のように多岐にわたります。
では、それぞれを詳しく見ていきましょう。
一般家屋と同様に、ビルの雨漏りの原因で多いのは屋根や屋上の劣化です。
ビルやマンションなどの屋根や屋上には、次のような防水対策が施されています。しかし、建築後年数が経過することで、防水性能が低下していきます。
防水の方法 | 特徴 |
---|---|
塗膜防水 | ウレタンゴムやゴムアスファルトなどの液体状の防水材をローラーなどで塗り、固める方法 |
シート防水 | 加硫ゴムや塩ビ樹脂の防水シートを貼り付ける方法 |
アスファルト防水 | 260℃の高温に熱したアスファルトを使用し、アスファルトルーフィングシートを何層にも重ねて設置する方法 |
こういった防水を施しても、年数とともに表面が傷んだり、ヒビ割れや穴あき、はがれなどが起こり、雨漏りの原因になります。
一般住宅もビル・マンションも、外壁塗装は美観だけが目的ではありません。外壁塗装をすることで防水対策をしているのです。
しかし、年数が経過すると劣化し、防水性能が低下して雨漏りが発生します。
ビルの外壁にヒビが入ると、雨漏りの原因になります。外壁のヒビ割れは、次のように状況によって危険度が変わります。
ヒビ割れ | 危険度 | ヒビ割れの状態 |
---|---|---|
ヘアークラック | 低い | 髪の毛程度の厚さのヒビ割れ。外壁塗装の塗膜層のヒビ割れなので、状態としては軽度。 |
乾燥クラック | やや低い | モルタルの外壁塗装によく見られる。水分蒸発や乾燥で収縮が起こり、ヒビ割れが生じる。 |
構造クラック | 高い | 建物の構造が原因で起こるヒビ割れで、雨水が侵入するため危険。 |
また、台風などの後にも外壁や外壁と屋根の境目あたりから雨漏りすることがあります。
サッシのゆがみやシーリングが劣化して、サッシのすき間から雨水が侵入します。また、外壁は気温や湿度の影響を受けて収縮や膨張する性質があります。そこに直接窓(サッシ)をはめるとさまざまな影響を受けるために、シーリングをします。
シーリングはコーキングとも呼ばれるもので、外壁とサッシなどの間にパッキンをはさんでクッションの役割を持たせます。防水の役割もありますが、劣化するとシーリングがヒビ割れたり、外壁からはがれたりして雨漏りを引き起こします。
雨漏りではありませんが、排水設備からの漏水も注意が必要です。
ビルは多くの人が利用するため、使用する水の量もかなり多くなります。そのため、排水設備への負担がかかってしまいます。トイレや台所、浴室(ある場合)をはじめエアコンの配管も長年使用していると、水漏れの原因になります。
しかも、配管や排水設備は外からは見えにくいところにあるので、発見したときはかなり傷みが進んでいる可能性があります。
早めの点検とメンテナンスが必要です。
このようにビルの雨漏りの原因はいくつもありますが、日ごろの点検やメンテナンスをきちんとすることで大がかりな修理を避けることができます。
点検は次の項目をチェックしましょう。
点検場所 | チェックすべき項目 |
---|---|
屋根・屋上 | ・屋根材にヒビ割れやはがれているところがないか ・防水塗膜が劣化していないか |
外壁 | ・外壁にヒビ割れがないかどうか ・シーリングにヒビ割れやはがれがないか ・外壁にカビが発生していないか ・外壁を手で触ると白い粉がつくかどうか |
窓枠・サッシ | ・サッシのまわりのシーリングにヒビ割れやはがれなどの異常がないか ・サッシの周辺がいつも濡れている、またはカビが発生していないか |
このような点検は素人が見ても、異常かどうか判断が難しいものです。細かなヒビ割れや傷みを見落としたり、本当は深刻な状態なのに的確な判断ができずに雨漏りが悪化したり…ということがあります。
定期的に専門家に点検を依頼しましょう。
ビルの雨漏りの修理は、防水工事業者や建築業者が行っています。
多くの業者の中から、安心して依頼できる業者を見分ける方法をご紹介します。業者を探す場合は、次の点をチェックしてみましょう。
最近は自社のホームページで概算の見積もり額を出す業者もありますが、実際に現地を見ると「この金額ではできない」「追加料金が必要」ということがあります。
面倒でも必ず現地調査をして、どんな工法で修理をするのか、塗料や防水材は何を使用するのかを確認しましょう。
1社だけで見積もり金額を出してもらっても、それが妥当な額なのかどうかが判断できません。
複数の業者に相談して、見積もりを出してもらいましょう。相見積もりをすることで金額の相場がわかりますし、さまざまな工法があることがわかります。
依頼する側もある程度の知識を持って判断することが大切です。
どの業界でもそうですが、防水工事も技術や塗料、防水材はめざましく進化しています。
見積もり時には、最近の施工実績を見せてもらいましょう。数年前の施工例や古い工法の施工実績しかない業者よりも、最新の工法を取り入れている業者の方が安心できます。
相見積もり時には、金額だけでなく実績も聞くようにしてください。
雨漏りの修理は、特別な資格がないとできないというわけではありません。しかし、次のような資格を持つ人がいると安心です。
従業員の資格などをホームページに記載しているか確認してみましょう。
雨漏り診断士 | NPO法人雨漏り診断士協会が「公正中立な立場で雨漏りを診断できる人材や能力に関する資格」として認定しています。 |
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建築板金基幹技能者 | 一般社団法人日本建築板金協会が講習と試験を行い、合格者に対して登録建築板金技能者修了証を交付しています。屋根や外装などの施工に携わり、熟練した技術を持ち、施工管理や品質管理、安全管理などを総合的に有する人に対して交付されます。 受講資格は、建築板金工事の施工現場で10年以上の現場施工に従事した者で3年以上の職長経験を有していること、かつ、次の5つの資格(建築板金一級技能士、職長・安全衛生責任者教育講習修了者、アーク溶接作業特別教育修了者、玉掛技能講習修了者、高所作業車運転技能講習修了者)のすべてを有する者です。 |
防水施工技能士 | 国家資格で、各都道府県の職業開発能力協会が実施する技能検定の防水施工に合格した人に与えられます。資格は3級から1級まであり、いずれも学科試験と実技試験があります。 |
コンクリート診断士 | 社団法人日本コンクリート工学会が実施する講習会と試験を受けて、コンクリート診断・維持管理の知識や技術、倫理観を保有すると認定された人が登録できる資格です。 |
一級建築士 | 国土交通大臣が免許を交付する国家資格で、建築物の設計や工事監理を行います。一級建築士と二級建築士がありますが、二級建築士は取り扱える建築物に制限があります。一般住宅なら二級建築士でも問題はありませんが、ビルや公共施設など大きな建築物は一級建築士でないと設計ができません。 |
防水工事後のアフターフォロー(定期的な点検やメンテナンス)があるかどうか、保証期間がいつまでかをよく確認しましょう。
ビルが建っている環境にもよりますが、最新の防水対策を行っても年数が経過すると防水性能は低下します。その際に備えることが大切です。
そういった意味でも信頼して長く付き合える業者を選ぶようにしましょう。
ビルは常に多くの人が利用するものだけに、雨漏りが発生すると利用者に迷惑がかかります。また、雨漏りが悪化してから修理を行うと、時間も費用もかかってしまいます。定期的に点検やメンテナンスをして、雨漏りを未然に防ぐことが大切です。
ビルの雨漏りの原因としては、屋根や屋上の劣化、防水性能の低下をはじめ、外壁塗装の劣化、窓(サッシ)の劣化などが考えられます。自分で点検しても小さなヒビやはがれを見つけるのが難しいため、専門家に依頼しましょう。
また、ビルの雨漏りの修理は、防水施工技能士やコンクリート診断士、一級建築士などが在籍している業者に任せると安心できます。ただ、見積もりは1社だけでなく複数の業者から相見積もりを取ること、必ず現地調査をした上で見積もり金額を出してもらうこと、施工実績の確認やアフターフォローの有無などをしっかり確認しましょう。