雨漏りのお悩みを解決

賃貸住宅で雨漏り発生!責任は誰が負う?修繕費用はどこが負担すべき?

賃貸住宅で雨漏り発生!責任は誰が負う?修繕費用はどこが負担すべき?

賃貸住宅・アパートでは、雨漏りをめぐるトラブルがよく発生します。特に大家さんに雨漏りの修繕を頼んだのに全然動いてくれないというケースが多いようです。

そこで、今回は賃貸住宅での雨漏りの責任と修繕費用は誰が負担すべきかについてご説明します。

賃貸住宅・アパートの修繕は貸主の義務

雨漏りに限らず、賃貸住宅、アパートの修繕は賃貸人(貸主)が負うべき義務とされています。

建物の修繕義務は賃貸人が負担すべき

民法606条で「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」と定めています。「使用収益」とはその物件を使用して利益を得ることを言います。つまり、貸主がその物件を賃貸して利益を得る場合は、必要な修繕をしなければいけないということです。

なお、平成29(2017)年5月26日成立(同年6月2日公布)の民法の改正によって、次の点が追加されました。

民法の改正ポイント1

民法606条第1項に次の項目が追加されました。(下記の★マークが追加された項目です。)

  • 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。
  • ★ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。

つまり、借主(入居者)側に原因がある場合は、貸主(大家さんや管理会社)には修繕の義務はないということです。

民法の改正ポイント2

さらに民法607条2項で下記が追加されました。

  • 賃貸物の修繕が必要である場合において、次のいずれかに該当するときは、賃借人は、その修繕をすることができる
    ● 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかか わらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。
    ● 急迫の事情があるとき。

このように、民法の改正では、雨漏りの修繕が必要であることを大家さんに伝えても応じてくれない場合または急迫の事情がある場合は、借主(入居者)側が修繕をしていいということに変わりました。

しかし、修繕費用はいくらまでなら妥当なのかとか、相当の期間内とはどの程度を示すのかは明確にされていません。

貸主によっては民法の改正そのものを知らないケースも考えられます。もし雨漏りで被害が出た場合は、感情的にならずにこの内容を伝えて交渉してみましょう。

雨漏りの原因が借主にある場合は貸主に責任は問えない

雨漏りの原因の多くは建物の老朽化や施工不良、自然災害(台風や竜巻)の被害などで、借主には何の責任もないケースがほとんどです。

しかし、中には借主に責任がある場合があります。

雨漏りの原因が借主にあるケース

上でもご説明したように、民法606条1項の改正で、「賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。」という一文が追加されました。
これは貸借人(借主)に原因があり修繕が必要になったときは、貸主の修繕義務は問われず借主が修繕しなければならないということです。

雨漏りの原因が借主(入居者)にあるケースとしては、下記が考えられます。

  • 外出時に窓を閉め忘れて、雨が吹き込んだ
  • 自分で外壁やベランダに防犯カメラを設置したとき、壁に穴が開いて雨漏りが発生した
  • ベランダの排水口に物を置いて排水ができず、水が室内に入ってきた
  • 風呂の水を出しっぱなしにして居住空間が水浸しになった
  • ベランダで禁止されているバーベキューをして、ベランダの床に傷をつけて雨水が階下に漏れた
  • 風呂の水を出しっぱなしにして階下の部屋に漏水した
  • トイレを詰まらせて水があふれて階下に漏水した

入居者の不注意で自分の部屋が水浸しになったり、階下の部屋に漏水したという場合は、原因となった部屋の入居者の責任となります。

どちらに原因があるかを証明することが大切

雨漏りや漏水の修繕を貸主と借主のどちらが行うべきかは、誰に原因があるかによって変わってきます。

明らかに借主に原因があるとわかる場合は問題ありませんが、どちら側に原因があるのかわかりにくい場合で裁判になると、貸主側が借主の過失(または故意)を立証する必要があります。

賃貸住宅の室内が雨漏りで汚れて転居する場合、原状回復はどちらが負担すべき?

雨漏りの発生によって畳が濡れたり、壁紙(クロス)にカビが生えたりすることがあります。
その賃貸住宅を転居する場合、原状回復の費用は貸主と借主のどちらが負担すべきなのでしょうか。

国土交通省の「原状回復条件のガイドライン」を見てみましょう。

退去時の原状回復のガイドライン

これは「ガイドライン」なので、必ずしもこの通りにしなければいけないということではありませんが、多くの賃貸借契約がこのガイドラインを参考にしています。

貸主が負担する 借主が負担する
床(畳・フローリング・カーペットなど) ・畳の裏返し、表返し(特に破損していないが、次の入居者確保のために行う場合)
・フローリングのワックスかけ
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡など
・畳の変色、フローリングの色落ち(日照や建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)
・カーペットに飲み物をこぼしたことによるシミやカビなど(手入れ不足などの場合)
・冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床を汚損した場合など)
・引越し作業などで生じた引っかきキズ
・フローリングの色落ち(借主の不注意で雨が吹き込んだことによる場合)
壁・天井・内装(クロス) ・テレビ、冷蔵庫などの後部背面の黒ずみ
・壁に貼ったポスターなどの跡
・壁に押した画びょうやピンの跡(下地ボードの張替えが不要な場合)
・エアコン(借主所有)設置による壁のビス穴や跡
・クロスの変色(日照など自然現象によるもの)
・借主が日常の清掃を怠ったことによる台所の油汚れ
・借主が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(貸主に通知せず、かつ拭き取るなどの手入れを怠り、壁などを腐食させた場合)
・タバコのヤニやニオイ
・壁のクギやネジの穴(下地ボードの張替えが必要な程度)
・借主が天井に直接つけた証明器具の跡
・落書きなど故意による汚れや毀損
建具など ・網戸の張替え(破損がなくても、次の入居者確保のために行う場合)
・地震で破損したガラス
・網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)
・ペットによる傷やニオイ
・落書きなど故意による毀損
設備その他 ・専門業者によるハウスクリーニング
・エアコンの内部洗浄(タバコなどのニオイが付着していない場合)
・台所やトイレの消毒
・浴槽、風呂釜などの取替え(特に破損していなくても、次の入居者確保のために行い場合)
・鍵の取替え(破損、鍵の紛失がない場合)
・設備機器の故障、使用不能(機器の寿命による場合)
・借主が清掃や手入れを怠った結果できるガスコンロ置き場や換気扇などの油汚れ
・風呂、トイレ、洗面台の水アカ、カビなど
・日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
・鍵の紛失または破損による取替え
・戸建て賃貸住宅の庭に生い茂る雑草

このように借主の掃除や手入れが不十分な場合や勝手にクギを打って下地ボードの張替えが必要な場合などは借主の責任で原状回復しなければなりません。

しかし、それ以外の場合は貸主が行うこととなっています。

雨漏りの修繕費用は火災保険が使える?

賃貸住宅やアパートでは、貸主(大家さんや管理会社)も借主(入居者)も火災保険に加入します。火災保険は火事だけでなく風災や落雷、水害、爆発なども補償の対象です。

貸主と借主が加入する火災保険の内容

しかし、貸主と借主それぞれの立場によって加入する火災保険の内容が下記のように異なります。

貸主(大家さん) 建物の火災保険
借主(入居者) ・家財の火災保険
・借家人賠償責任補償
・個人賠償責任補償

入居者には隣室や建物の賠償責任はない

借主が建物の火災保険に加入しなくてもいいのは、「失火責任法」があるからです。
火災には「失火責任法」(民法709条)が適用されて、重過失(重大な過失)ではない場合は火元の人が隣家への賠償などはしなくてもいいとされています。

賃貸住宅の場合でも重過失(天ぷら油を長時間ガスコンロで加熱して火が出たとか寝タバコが原因での失火)ではない限り、火を出した人が隣室に対しての損害賠償責任はありません。

そのため、一般に賃貸住宅に入居する際には、建物に対する火災保険ではなく、家財や自分が借りている部屋の損害賠償責任を問われた場合に補償されるものになっています。

また、個人賠償責任保険は自分のミスで漏水し、階下の人に迷惑をかけた場合の補償などに使います。

このような目的で入居時にこれらの保険に加入します。

貸主は建物の損害のために火災保険に加入

貸主は「賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」とされています。
そのため、火災や水害などで建物に修繕が必要になった場合は火災保険で対応するようになっています。

雨漏りで火災保険が利用できるケース

ただ、どんな原因の雨漏りでも火災保険が利用できるというわけではありません。

雨漏りの原因 状況 補償の有無
建物の老朽化 屋根やベランダが老朽化して雨漏りがする ×
施工不良 施工業者の不備 ×
窓やドアの閉め忘れ 入居者や大家さんが窓やドアを閉め忘れて雨が侵入する ×
台風 ・台風で屋根や窓が壊れて雨漏りがする
・台風で飛来した看板などで屋根や窓が壊れて雨漏りがする
暴風・竜巻 ・暴風や竜巻で屋根・窓が壊れて雨漏りがする
・暴風や竜巻による飛来物で屋根や窓が壊れて雨漏りがする
落雷 落雷で屋根や窓が壊れて雨漏りがする
積雪 積雪で屋根やベランダ、雨樋が壊れて雨漏りがする

このように雨漏りに対して火災保険が使えるのは、自然災害で被害を受けた場合に限られます。

賃貸物件の雨漏りの責任のまとめ

賃貸物件の修繕は基本的に賃貸人(大家さんや管理会社)が責任を負うことになっています。しかし、賃借人(借主)の過失や故意で漏水した場合は、借主が修繕しなければなりません。

また、転居する際の原状回復については、雨漏りによるシミなどは借主が行わなくてもよいとされています。

賃貸住宅は貸主は火災保険に、借主は家財保険や個人賠償責任保険などに加入します。台風や竜巻などの自然災害により雨漏りは火災保険で補償が受けられます。また、入居者の不注意で階下に漏水した場合などは、個人賠償責任保険で対応できます。

念のために内容を確認しておきましょう。