ネズミ駆除のお悩みを解決
自分では手に負えないネズミ駆除。困ったときは自治体(市役所や町役場)に行けば相談に乗ってもらえるのでしょうか。
実は、対応は自治体によってさまざまです。中にはネズミ捕獲用のカゴを貸し出してくれるところもありますが、基本的には相談に応じるだけで駆除は各家庭で行うことになっています。
このページでは自治体のネズミ駆除の対応について、ご説明します。
東京都はネズミ駆除に比較的積極的で、各自治体(市区町村)の担当者のために「東京都ねずみ防除指針」を作成しています。
この指針は各自治体がネズミ対策に関わる相談や指導などを行う際の標準的なマニュアルとして活用できるようにしたものです。もちろん、ネズミ駆除に関心がある都民でも利用できるようになっています。
「東京都ねずみ防除指針」によると、都内の区市町村と都保健所で受け付けたネズミに関する被害・相談などの件数は平成7年度は年間1万件ほどでしたが、平成13年度以降は15,000件~2万件前後を推移しているそうです。
また、都の調査によると、ネズミが生息する区域は従来の繁華街やビル街だけでなく住宅地にも広がっていることがわかりました。特に繁華街、住宅地ともにクマネズミが多くなっているとのことです。
このようにネズミの生息域が広がった背景には、市街地の再開発や古い建物の取り壊しなどが関係していると言われています。そのため、自治体と住民だけでなく、関係する団体や企業にも対策を呼び掛けています。
なぜ東京都がここまでネズミ駆除に力を入れているかというと、ネズミが繁殖すると都市機能に大きなダメージを与えるからです。特に感染症は人に生命にかかわるだけに深刻です。
ネズミはさまざまな病原菌を媒介します。14世紀ごろにはヨーロッパでペストが大流行し、当時の人口の約3割の人が死亡しました。
日本では1899(明治33)年に台湾から帰国した日本人が発病し死亡しました。その後も各地で発病や死亡が相次いだため、東京市(当時)は1900年にペスト予防のためにネズミ1匹あたり5銭で買い取るほか、警視庁では屋内での裸足を禁止するなどの対策を進めました。
国内でのペスト発生のピークは1907(明治40)年で、これはインドから輸入された綿花に混入したネズミが感染源になったと言われています。ペストは1926(昭和元)年を最後に発生していませんが、ネズミはペスト以外にも食中毒を引き起こすサルモネラ菌やチフス菌、E型肝炎など多くの感染症を媒介します。
ネズミが発生すると次の面で市民生活に多くの影響を与えます。
では、それぞれを東京都の「東京都ねずみ防除指針」から見ていきましょう。
下記のように、ネズミはペスト以外にもさまざまな病原菌を媒介します。
鼠咬症(そこうしょう) | ネズミに咬まれることで感染する。発熱や発疹が見られ、「鼠毒」とも呼ばれる |
---|---|
サルモネラ菌 | 食中毒の原因になる |
ハンタウイルス菌 | 激しい出血や腎症状(たんぱく尿・乏尿など)を招く |
E型肝炎 | ネズミの排泄物を介して感染する |
イエダニ | ネズミに寄生するイエダニが人を刺して、激しいかゆみや発疹を引き起こす |
他にもネズミは多くの感染症を引き起こします。
また、イエダニの被害は深刻で、東京都に寄せられるイエダニの相談件数は年々増加しています。
ネズミがいることで精神的な苦痛を感じる人が多くいます。
東京都が平成15年にケアマネージャーを対象にした高齢者宅でのネズミ被害の実態調査によると、モノをかじられたとか糞があるといった物理的な被害の他に、次のような精神的被害をあげる回答が多く見られました。
このように場合によっては健康状態が悪化することもあります。
ネズミはどんなものでもかじる習性があります。社団法人関東電気保安協会によると、管轄地域内で年間約70件前後の小動物による電気設備のトラブルが発生し、その約6割はネズミによるものだということです。
よく起こるケースとしては、変電設備内にネズミが侵入したり、電気ケーブルをかじったりしてショートし、停電が起こるというものです。
家庭内でもネズミが電気ケーブルをかじることで停電や火災を招くことがありますが
変電設備内で起こると大規模停電になり、周辺のビルなどでのパソコンのデータ焼失、列車の運行への影響、飲食店や小売り店の冷凍食品の解凍など多くの被害につながります。
また、ガス管をネズミがかじることでガス漏れを起こし、ガス爆発や火災を招くケースもあります。
ネズミは次のような経済的被害を招きます。
ネズミは食品以外の木材や紙、革製品などもかじります。そのため、商品としては食品以外の衣料品や革製品、家具なども被害に遭います。
電気系統の事故や火災は上でご紹介した通りです。また、飲食店にネズミが出没するとわかると、食材を食べられるほかに風評被害が出て売上の減少や閉店に追い込まれるケースもあります。
このような背景があるため、大都市・東京都では自治体ごとにさまざまな対応を行っています。
ただ、取り組み内容や対応は自治体によってかなり異なります。
東京都23区内の各自治体のネズミ駆除の対応は下記のようになっています。
自治体 | 対応 |
---|---|
世田谷区 | ・ネズミの習性や被害の対策に関する相談 ・ネズミの侵入口チェック(要予約・無料) (商店、事業所、空き家などは除く・駆除のアドバイスだけで駆除そのものは実施していない) ・ネズミ対策に関する出張講習会(無料) |
大田区 | ネズミ駆除専門業者を自宅に派遣し、ネズミの侵入口の探し方やふさぎ方のアドバイスを実施 (侵入口をふさぐことや駆除は自分で行う)要予約 無料 |
新宿区 | ・毎年2月に区内10ヶ所、特別出張所などで「ネズミの駆除相談会」を実施 ・衛生課の窓口で通年ネズミの駆除相談を受け付け |
千代田区 | ・年末(11月下旬~12月上旬)に申し込みのあった町会に必要な数の殺鼠剤(さっそざい)を配布し、一斉駆除を実施 |
荒川区 | ・通年、ネズミ駆除の相談に対応 ・バネ式やカゴ式のネズミ捕獲用トラップの貸し出し ・12月に町会を通じて必要数の殺鼠剤を配布して一斉駆除 毎年2月に区内10ヶ所、特別出張所などで「ネズミの駆除相談会」を実施 ・衛生課の窓口で通年ネズミの駆除相談を受け付け |
中央区 | ・11月~3月にかけて公共の下水道マンホールなどに殺鼠剤と捕鼠(ほそ)器を設置してネズミ駆除を実施 ・通年、公共の道路の植え込みなどのネズミの巣穴に殺鼠剤を投入してネズミ駆除を実施 ・町会やマンションなどから要望があればネズミ・衛生害虫の出張講習会を希望の場所で開催 |
杉並区 | ・殺鼠剤の無料配布(1回限り) |
これは一部ですが、このように多くの自治体でネズミ駆除の相談に応じています。相談窓口は生活衛生課で行っているところが多いようです。
なお、殺鼠剤や捕獲用カゴの貸し出しは決して安易に行われることはなく、窓口の担当者が状況をしっかり聞き取って、確かにネズミの被害であることを確認した上で実施されます。
一方、渋谷区や足立区、品川区などでは、特に上記のような積極的な取り組みはしていません。
また、八王子市、調布市、国立市などでも特に取り組みはしていません。
上記のように殺鼠剤の配布やネズミ捕獲用カゴの貸し出しなどを自治体が行っている場合でも、駆除するのは各家庭(個人)になります。
自治体ではネズミの駆除はやってくれないので、注意しましょう。
では、東京都以外の自治体では、どのような対応になっているのでしょうか。
東京都以外の都市部の自治体の対応は下記の通りです。
自治体 | 対応 | 対応部署 |
---|---|---|
横浜市 | ・ネズミ捕獲用のカゴの貸し出し(無料) ・駆除の相談 |
福祉保健センター生活衛生課 |
川崎市 | ・ネズミ捕獲用カゴの貸し出し(無料) | 保健福祉センター衛生課 |
大阪市 | ・ネズミ防除方法の相談に対応 ・ネズミ捕獲用カゴの貸し出し ・12月~2月を「ネズミ防除強調期間」として、市内一斉のネズミ防除を推進 |
各区保険福祉センター 生活環境業務担当 |
神戸市 | ・ネズミや害虫の相談に対応 | 衛生監視事務所 |
このように各自治体で取り組みが異なります。これらの場合も相談や器具の貸し出しはありますが、駆除は各家庭・個人で行わなければなりません。
なお、上記以外で横須賀市、千葉市、京都市、名古屋市、福岡市などでは、特に摂り組みや対応は行っていません。
ネズミの被害で困った場合は、一度自治体に相談してみるといいかも知れません。ただし、駆除の方法や駆除業者を紹介してくれるだけ…というところが多いので、参考程度に聞いておき、実際は駆除業者を探して依頼することになります。
ネズミが発生すると、個人や家庭単位での問題だけでなく、都市機能にも大きな影響を与える可能性があります。
そのため、自治体によってはネズミ捕獲用カゴの貸し出しなどを行っています。ただし、自治体では相談には乗ってくれますが、実際の駆除は自分でやらなければなりません。
どのようにして駆除をすればいいのかわからないという場合は、一度自治体の窓口に相談されるといいでしょう。
また、直接駆除の専門業者に相談するのもいい方法です。ネズミはすぐに繁殖するので、早く対策を取るようにしましょう。