防犯カメラのお悩みを解決
このページで分かること
防犯カメラは犯罪抑止効果や犯人検挙など防犯対策には欠かせません。しかし、同時に第三者が映り込んでしまうという問題も。
今回は防犯カメラで撮影時のプライバシーに関してご説明します。
防犯カメラに他の人が映り込んだ場合、プライバシーの侵害や法的な処分の対象になるのでしょうか?
肖像権と個人情報について見ていきます。
肖像権とは、自分の姿や顔をみだりに他人に撮影や描写、公表などされない権利のことで、日本音楽事業者協会によると肖像権には次の2つの側面があるとしています。
プライバシー権 | 自分の姿を他人に無断で撮影されたり、公表されたりしないように主張できる権利で人格権に則した権利 |
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パブリシティ権 | 芸能人やスポーツ選手など著名人の影響力を活かして商品価値を高め、経済的な利益獲得のために利用する権利のことで、財産権に則した権利 |
特にプライバシー権については、憲法13条「すべての国民は個人として尊重される」のもとで本人の承諾なしにみだりに姿や顔を撮影されない自由が保証されるという考えが一般的です。
では、犯罪防止や犯人特定のために防犯カメラで撮影した場合、罪に問われることはあるのでしょうか?
コンビニの防犯カメラについて名古屋地裁が平成16年7月に出した判決をもとにご説明します。
これはコンビニの店内に設置された防犯カメラで自分の姿が撮影され、その画像を万引き犯人検挙のために愛知県警に提出されたことによりプライバシー権を侵害されたと客が訴えたものです。しかし、コンビニ側は来客や従業員の生命・安全、財産を守るために一定の措置をとることが認められると判断し原告(客)の訴えは棄却されました。
この事例からも、防犯目的以外のあきらかに不必要と思われる撮影は問題となりますが、そうでない限りは許されるということがわかります。
では、防犯カメラに映った画像をインターネットで公開することは違法になるのでしょうか。
これに関しては、次の観点から考える必要があります。
特に商店や個人など民間の立場で画像を公開する場合は、上記の問題に触れる可能性があります。しかし、テレビや新聞などの報道機関が防犯カメラの画像を公開するのは「表現の自由」があり認められています。
もし、店舗や事務所に泥棒が入った場合は、経営者側が画像を公開するのではなく、まずは警察に相談すると安心です。
では、次に個人情報について見ていきましょう。
最近の防犯カメラは画像が鮮明に映るので、顔や持ち物などから容易に個人を特定できるケースが増えてきました。このように個人が特定できるものに関しては、「個人情報保護法」の対象になります。
個人情報とは「生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるもの」のことです。そのため、氏名や生年月日、住所だけでなく、映像や音声でも個人を特定できる場合は個人情報に該当します。
ちなみに、個人情報とプライバシーは異なります。プライバシーとは他人の干渉を許さない個人の私生活上の自由のことを指します。
また、個人情報を守るべき義務がある人や団体のことを「個人情報取扱事業者」と呼び、一般の私人や小規模事業者は対象外になっています。
映像や画像でも、個人が特定できる場合は個人情報となります。だからと言って顔がはっきりわからないようなぼやけた画像では意味がありません。
そこで、防犯カメラで撮影した画像は、外部に流出しないように配慮する必要があります。具体的には画像をクラウドサービスなどインターネット上で保存する場合は、アクセス制限をかけたり、パスワードをわかりにくいものにしたりといった工夫が必要です。また、USBメモリや外付けのHDD、DVDなどに保存する場合は、その媒体自体が盗まれないように注意しましょう。
最近は自治体でも通学路やごみ集積所、駐輪場などに防犯カメラを設置するケースが増えています。
各自治体では、「防犯カメラの管理・運用に関するガイドライン」を設けて、プライバシーや個人情報を保護するように努めています。
東京都の例で見てみましょう。東京都では「東京都が設置する防犯カメラの運用に関する要綱」として、次のように定めています。
目的 | 東京都が管理する施設及び工作物に設置した防犯カメラについて、その撮影または記録した映像データの管理に関する基本的事項を定めることにより、適正な運用を図ることを目的とする。 |
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定義 | 防犯カメラとは犯罪の予防を目的として不特定の者が出入りする場所を撮影するために固定して設置するカメラを指す。 |
職員の責務 | 職務上、防犯カメラにより情報を知り得た職員は要綱に基づき、防犯カメラの適正な運用に努めなければならない。 また、職員は防犯カメラにより知り得た情報を第三者に知らせたり、不当な目的に利用したりしてはならない。 |
設置 | 防犯カメラを設置した施設等には、防犯カメラの管理責任者を置かなければならない。また、管理責任者はこの要綱に基づき防犯カメラの適正な運用を図らなければならない。 |
防犯カメラの設置に関する表示 | 管理責任者は防犯カメラが設置されている旨を明確かつ適正な方法で表示するものとする。 |
自治体では防犯カメラのガイドラインの中で、設置場所や画像データの保管期間などを細かく定めています。(保管期間は目安です)
自治体 | 設置場所 | 画像データの保管など |
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新宿区 | 区の施設、庁舎、公の施設、公園およびこれに類する施設など | 原則7日以内で経過後は消去する (ただし、必要があると認めた場合は保管期間を別に定める) |
横浜市 | 不特定多数の者が利用する施設や場所 (道路、公園、金融機関、小売店、百貨店、商業施設、事業所、劇場、映画館、スポーツ施設、地下街、商店街など) |
おおむね1ヶ月以内 |
大阪市 | 公共交通機関、各種公共施設、商業施設、映画館、スポーツ・レジャー施設、宿泊施設、道路公園など | 1ヶ月以内 |
京都市 | 不特定多数の者が利用する施設や場所 (道路、公園、金融機関、小売店、百貨店、商業施設、事業所、劇場、映画館、スポーツ施設、地下街、商店街、社寺など) |
最大1ヶ月 |
上の表のように、どの自治体でも公共施設や不特定多数の人が利用する場所などに防犯カメラを設置する際には、守るべきガイドラインを設けています。
また、画像データの保管期間は最長でも1ヶ月としているところが多いようです。さらにプライバシーに配慮するよう、次のような注意喚起をしています。
自治体や個人情報取扱業者などは、ここまでご説明してきたようにプライバシーや個人情報を守るようにさまざまなルールが設けられています。
一方、個人の場合はそこまで厳しいことはありません。しかし、モラルを守ることが大切です。
自宅や個人所有の小屋、駐車場、畑などに防犯カメラを設置する場合は、近隣の住宅や通行人が映り込まないように、設置場所や角度に注意しましょう。
特にベランダやバルコニーに設置する際には、隣の家の窓や庭、ベランダにカメラが向かないように注意が必要です。
また、個人が屋外に防犯カメラを設置する場合は、防犯目的にとどめるようにしましょう。
防犯カメラは犯罪防止や証拠を残す上で必要不可欠なものですが、一方で不特定多数の人が映り込む可能性があります。
防犯カメラを設置する場合は、設置場所や角度、録画した画像データの取り扱いなどでプライバシーへの配慮が必要です。
自治体などが設置する場合はガイドラインが設けられていますが、個人が設置する場合もそれを参考にして、近隣の人のプライバシーを侵害しないように注意しましょう。